
12月20日、日本一の漫才師を決めるお笑いコンテスト「M-1グランプリ2020」がテレビ朝日系列で生放送されました。
その結果にネット上では賛否両論が巻き起こっていますが、個人的にはとても楽しめた決勝戦だと思いました。
そんな年末の風物詩「M-1グランプリ2020」を徹底的に考察していきたいと思います。公式のネタ動画も一緒に載せていますので、そちらもぜひ。
昨年の考察はこちら!
この記事のもくじ
まずその前に…
今回も昨年と同様、生放送中に自分なりの点数をつけてみました。
そこであらかじめお断りさせていただきたいのですが、僕は東京ホテイソンと見取り図とオズワルドのファンです。
なので、その3組は贔屓目に見てしまっているかもしれません。その部分を踏まえてご覧下さい。
ファーストラウンド
1番手:インディアンス
もはやお馴染みとなったM-1流おみくじ「笑神籤」で最初に選ばれたのは、なんとまさかの敗者復活組。
その場で敗者復活戦の勝者が発表され、その結果昨年決勝戦に進出したインディアンスが1位となりスタジオへと直行。
まずこの敗者復活戦の結果ですが、「インディアンスでよかった…」とつくづく思っています。
というのも、トップ3には昨年決勝戦で3位になり大ブレイクしたぺこぱがいましたよね。でもぺこぱのあの順位には今回はあまり納得できていません。
ぺこぱはむしろ好きなコンビです。しかし、敗者復活戦のぺこぱのネタは少し空回りした感じがあり、まさに「これで決勝進んだらぺこぱが叩かれるタイプのやつやん…」といった感覚。
しかし、昨年であのキャラの手の内が明らかになったのに準決勝まで駒を進めるのは普通にはできません。そこはぺこぱの腕の良さなのでしょう。
…話を決勝戦のインディアンスに戻して、ネタの出来ですが…昨年よりもくどさがなく、とても洗練された漫才だなあと思いました。
ツッコミのきむさんもいい味が出ていましたし、ボケの田渕さんのうるささも今年は良い方向に作用していたと思います。
個人的には88点をつけました。点数としては昨年よりも低くなってしまっていますが、決して昨年の方がよかったというわけではなく、昨年よりも楽しく見ることができました。
エントリーNo.3182 インディアンス
合計得点:625点【89点/89点/85点/89点/90点/90点/93点】
ファーストラウンド順位:7位/10組
2番手:東京ホテイソン
続いて「笑神籤」が引かれたのは東京ホテイソン。グレープカンパニー所属、すなわちサンドウィッチマンさんの後輩芸人です。
僕は昨年の敗者復活戦で見て以来ファンなのですが、今回のネタも東京ホテイソンらしさが出ていてよかったと思うのですが…以外に点数は伸びず、617点止まり。
何がいけなかったんでしょうか?「アンミカ」のくだりとかが非常に面白くて、個人的には91点をつけていたのですが…うーん。
とはいえ、まだ結成から5年しか経っていないので、おそらくあと10回出場できるわけです。来年こそ、会場をさらにドンと沸かせてほしいものです。
エントリーNo.3000 東京ホテイソン
合計得点:617点【86点/91点/85点/89点/88点/86点/92点】
ファーストラウンド順位:10位/10組
3番手:ニューヨーク
3番手となったのは昨年も決勝戦に進出したものの、松本さんから「ヘラヘラしたツッコミはあんまり好きじゃない」と言われてしまったニューヨーク。
今回は前回の歌ネタから方針転換して、しゃべりで勝負していましたね。自分は今回のネタは面白いと思いました。
というのも、歌ネタというのは歌の流れがあるので、笑いが取りにくいというのがあるんですよね。それも短い歌を何個かではなく、長めの歌を一つとなるとなおさら…。
昨年はネタも「ん?」と思った上、得点発表後の「最悪や!」のくだりもマジなのか冗談なのかよく分からなかったので、あまり好きにはなれなかったのですが、今回のネタを見て「あっ、ニューヨークって面白いじゃん!」となりました。
…得点は88点をつけちゃったんですけど。ちょっと低すぎたかな。
エントリーNo.1602 ニューヨーク
合計得点:642点【88点/93点/93点/91点/91点/92点/94点】
ファーストラウンド順位:5位タイ/10組
4番手:見取り図
4番手として選ばれたのは、3年連続の決勝進出で「大本命」とも言われていた見取り図。
個人的に見取り図は大好きなので応援していたのですが…さすがですね。期待を裏切らない面白さ。
過去2回とは趣向を変えて今回はコント漫才で挑んでいましたが、やはりツッコミのトーンがくせになる。終始安心して見ていられる漫才だったのではないでしょうか。
「コント漫才もできるんだ…」って思いました。やっぱり芸人さんってすごい。94点。
エントリーNo.3474 見取り図
合計得点:648点【91点/92点/93点/93点/93点/91点/95点】
ファーストラウンド順位:3位/10組
5番手:おいでやすこが
史上初となるユニットコンビでの決勝進出となったおいでやすこがの2人。ネタを見たことがなかったので、はてさてどんなものかな…と思っていたところ。
…ハマっちゃいましたね。
確かにテクニックの面では他の出場者の皆さんに劣るのかもしれないですが、あのキレ方といい動きの面白おかしさといい、それらはツッコミのおいでやす小田さんにしか出せないなと思いました。
漫才が終わった後の上沼さんの「血管切れるで!」も面白かったです。確かにあの芸は小田さんの体力的に、もってあと3年(笑)。
…にしてもあのボケのこがけんさんって、確か「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」に出ていましたよね。漫才もできるんですね…基本歌ってただけと言われればそうなんですが。
個人的には見取り図に匹敵する93点をつけました。そりゃテクニックも重要だけど、盛り上げる勢いだって大事っしょ。
エントリーNo.2178 おいでやすこが
合計得点:648点【92点/93点/93点/96点/95点/95点/94点】
ファーストラウンド順位:1位/10組
6番手:マヂカルラブリー
どうしても、笑わせたい人がいる男です。
野田クリスタル
もうこのつかみから面白いもんなあ。登場時に土下座してた時点でもう笑っちゃったんですけど。
結局のところ、3年間でこの2人は特に何一つ変わっておりません(笑)。やってることは完全に一緒です。
ならば3年前と何が違うのかなということなんですが、それはおそらく皆さんの「見る目」です。
3年前はネタのチョイスを間違えたというのもあると思いますが、皆さんからしてみれば3年前のネタを見た時は「気持ち悪い奴が気持ち悪いことしてる」という感覚だったと思います。
それが、野田さんが「R-1ぐらんぷり2020」で優勝して、ちょこちょこテレビに出てくるようになってから、知らぬ間に見る目が変わったのだと思います。
「くだらない、けど面白い」これが、マヂカルラブリーそのものであり、強みなのだと思います。
たぶん、マヂカルラブリーのネタを理解できるようになるのは一生無理だと思います(笑)。でもそれでいいんです。「マヂカルラブリーってそういうもんだから」と思っておけば。
でも、村上さんのどこか呆れたようなツッコミは、3年前より確かに上達していると思いました。ボキャブラリーに頼らず、単純明快なツッコミもいいものだなあ、と。
個人的には今大会最高の95点をつけました。マヂカルラブリー、あんたらの勝ちだよ。
エントリーNo.2617 マヂカルラブリー
合計得点:649点【88点/94点/94点/90点/96点/93点/94点】
ファーストラウンド順位:2位/10組
7番手:オズワルド
場をハチャメチャにしたマヂカルラブリーの後を継いだのがオズワルド。また優勝コンビの後だ…。
オズワルドは緩急をつけるのが非常に上手で、なおかつワードセンスも抜群なので個人的には最も期待していたコンビです。
披露したのは「改名」というネタ。このネタは初見だったのですが、冒頭から観客の心をしっかり掴んでいて、とても心地よい漫才でした。
最後の方にはしっかりボルテージも上がっていき、「選ばれちゃったー!」の部分には声を出して笑ってしまいました。
…のですが、なぜか審査員の点数は思うようにいかず(といっても、平均90点のラインである630点は超えていますが)、結果は5位タイに。個人的には最終決戦に十分進めるレベルだろうと思ったのですが、そう上手くはいかないものですよね。
松本さんは「もっと『静の漫才』が見たかった」と評した一方、巨人師匠には「もっとうるさくていい」といった内容の評価をされるなど、オズワルドにとっては非常に難しい判断というかなんというか…。
でも一ファンとしては、このままの強弱のつけ方が一番ベストなのではないかなと思っていますが、どうなのでしょうか。
オズワルドはいい意味で薄味のあっさりとした漫才なので、勝ちにこだわらずこれからも独自の世界を作り上げていってほしいと期待しています。
個人的にはマヂカルラブリーと同じ点数である95点をつけました。マヂカルラブリーが勢いで95点をかっさらっていったのに対して、オズワルドはそのテクニックの巧さを評価した結果、この点数になりました。爆発性の95点に対して、安定性の95点。オズワルドに届け、この思い。
エントリーNo.728 オズワルド
合計得点:642点【88点/91点/95点/93点/95点/88点/92点】
ファーストラウンド順位:5位タイ/10組
8番手:アキナ
8番手のアキナは2016年以来4年ぶりの返り咲き。前回は4位という好成績だっただけに、それだけ視聴者の期待も高かったと思うのですが…。
…なんでしょう。ホントに上手くハマりませんでした。
ネタのチョイスをミスしてしまったのか、それとも調子の違いでこの会場の観客を惹きつけることができなかったのか、それはお笑い素人の僕には分かりません。
ただ、なんでしょうか…アキナファンの方には申し訳ないですが、今年のアキナはコケた。
何が悪いのか…全く面白くないわけじゃない…来年、がんばれ。自分は87点をつけた。
エントリーNo.3006 アキナ
合計得点:622点【89点/88点/87点/90点/91点/85点/92点】
ファーストラウンド順位:8位タイ/10組
9番手:錦鯉
そんなタイミングで現れた9番手は史上最年長コンビ・錦鯉。若手芸人のNo.1を決める大会に、ついに芸歴26年の49歳と芸歴21年の42歳が来てしまいました。
まあそこまで芸歴が長いなら、ネタはさぞかし落ち着いていて、ベテランの風格を匂わせるような感じなんだろうな…と思ったそこのアナタ。
錦鯉のネタは、芸歴3年の超若手芸人がやってるようなネタとだいたい同じです(笑)。
唯一その年齢を感じさせる要素といえば、その題材がよりにもよって「パチンコ」だということ。
かつて年末のゴールデンタイムでの賞レースで、パチンコネタをやってのけた芸歴20年オーバー同士のコンビがいたでしょうか。
いや、いません(笑)。
ただただバカバカしくて笑ってしまいました。爪痕を深く残せたのではないでしょうか。個人的には、東京ホテイソンと同じ91点です。
エントリーNo.3471 錦鯉
合計得点:643点【87点/92点/95点/95点/92点/89点/93点】
ファーストラウンド順位:4位/10組
10番手:ウエストランド
ついに迎えたラストバッターの10番手。爆笑問題などが所属するタイタンの若手芸人・ウエストランドがその重責を担いました。
妬み気味に毒を吐くというスタイルはなかなかいい着眼点かなと思ったのですが、ちょっと消化不良が目立ってしまった感じです。もう少し振り切った毒があれば、ウエストランドへの支持は広がっていくと思うのですが…何事もどっちつかずになってしまうと、もやもやしてしまうんですよね。
トップバッターのインディアンスと比較して、個人的にインディアンスの方が面白く感じたので、今回は86点。でもなんか、伸びていく予感もする。
…それにしても、M-1終了直後に放送された「爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞」の冒頭で爆笑問題の太田さんが、事前収録なのに「ウエストランドは残念だったな」と言い放ったのには笑ってしまいました。
エントリーNo.3473 ウエストランド
合計得点:622点【88点/91点/85点/86点/90点/90点/92点】
ファーストラウンド順位:8位タイ/10組
最終決戦
最終決戦はおいでやすこがとマヂカルラブリー、そして見取り図の戦いとなりました。イロモノ2組と、正統派1組…こんなのもうヤバい予感しかしなかったよね。
1番手:見取り図
今回は恒例となっていた順番決めが廃止されたようで、ファーストラウンドを3位通過した見取り図がそのまま最終決戦のトップバッターとなりました。
最終決戦ではいつものしゃべくり漫才に戻していましたね。見取り図の守備範囲の広さが改めて分かった上に、作りこみも細かいネタだと思いました。
ただ、この後に勢いバリバリの2組が続いたのは何とも痛かったですね。でも2番手だったらと思うと…やっぱり、トップバッターでよかったのかな。
ちなみに、もし自分が最終決戦の3組中ベストな1組を選ぶならば、見取り図を選びます。後述するマヂカルラブリーやおいでやすこがにはウケの部分で少しだけ後れを取っていましたが、その分をスキルの高さできっちりカバーできていたと思います。来年は見取り図とオズワルドの最終決戦を見たい。
2番手:マヂカルラブリー
ファーストラウンドで2位となったマヂカルラブリーの2本目は「つり革」を題材にした漫才(?)。
いや、漫才というよりかは…コントじゃないけど、なんだろう。よくわかんない(笑)。
というかあんな床に寝転がってる漫才初めて見たよ!
まあ、マヂカルラブリーはあれでいいんです。ぶっちゃけ、マヂカルラブリーの2本目は悔しいけど涙出るほど笑ってしまいました。笑いの大きさで言ったらダントツです。
ちなみに今日はいろいろな情報番組に出ずっぱりのマヂカルラブリーでしたが、僕が見た番組ではどれも1本目のネタをやっていました。まあ仕方ないわな、あんな内容じゃ。
3番手:おいでやすこが
ファーストラウンド1位のおいでやすこがはラストバッターで登場。
…うーん、他の2組が1本目と同等もしくはそれ以上のネタをぶち込んできたのに対して、おいでやすこがの場合は2本目で少しパワーダウンしてしまった感じです。
1本目があまりに面白かったので仕方ない側面はあると思うのですが、自分は歌じゃなく、一度普通のしゃべりの中でおいでやす小田さんがキレる姿を見てみたかったですね。
それでも面白かったです。割と今回の最終決戦も、レベルは高かったよ。
ネット上での批判について
さて、今回ほとんど誰も予想していなかった、マヂカルラブリーの下克上優勝という形で幕を閉じた「M-1グランプリ2020」ですが、どうやらネット上では批判の声がちらほら…。
「マヂカルラブリーとおいでやすこがは漫才じゃない」
「ちゃんと漫才をしていたのは見取り図だけ」
「うるさいコンビが多すぎる。日本の漫才ってこんなだった?」
「合間のかまいたちのCMが一番面白かった」
ネット上の批判意見
昨年、ほぼ文句なしの優勝だったミルクボーイに比べて、今年優勝したマヂカルラブリーのネタを果たして漫才とみていいのか、という意見が散見されます。
確かに、気持ちは分かります。やはり漫才の真骨頂はしゃべくり漫才でしょうし、それを武器にしたミルクボーイやかまいたちは称賛に値すると思います。
そして、もしかまいたちが今年ラストイヤーだったとして、昨年のようなネタを披露していたのなら…おそらく、かまいたちが優勝していたでしょう。それだけ、昨年の壁は高かったのです。
ただ、よく考えてほしい。今回の「M-1グランプリ2020」にエントリーしたのは延べ5081組にのぼります。
もし、その5081組がみんなしゃべくり漫才だったら…それこそ芸の幅が狭まり、つまらない大会になってしまうと思います。
昨年出場したすゑひろがりずの採点の際、審査員からは「これが漫才なのかという疑問はあるが、漫才は面白ければ形は何でもいい」といった趣旨の発言がありました。
つまり、たとえ鼓を持っていようと、歌を歌っていようと、床で暴れていようと、自分がパチンコ台になっていようと…マイクの前で着の身着のまま相方と立っている限りは、それは「漫才」です。
だから、あえてそこに厳しい線引きをしなくたっていいんじゃないかな…と、僕は思います。
細かいことを気にしない方が、人生楽しいですよ。「お笑い」という娯楽ぐらい、気楽に肩の力を抜いて見てみませんか。
とにかくおめでとう、マヂカルラブリー!